ある日、妹から少し真剣な声で相談がありました。
「母が最近、耳が遠くなってきていて、話しかけても返事が返ってこないことが増えた。補聴器を買ってあげたいと思うんだけど、金額が高くて……助けてほしい」
妹は昔から「金は出さないが口は出す」タイプです。
正直なところ、普段であれば軽く受け流してしまう相談だったかもしれません。
ただ今回は「母のこと」でした。
そして、僕自身もずっと心のどこかで気になっていた問題でもありました。
これは単に「補聴器を買う・買わない」という話ではありません。
家族、老い、お金、本人の気持ち――
それらが複雑に絡み合う、とても繊細なテーマでした。
実家のテレビの音量と、昔から感じていた違和感
僕の実家では、昔から父の耳が遠いです。
その影響で、テレビの音量は常に大きく、子どもの頃からそれが当たり前の環境でした。
正直に言うと、あの音量は頭が痛くなるレベルです。
大人になってから実家に帰るたび「よくこの音で生活できるな」と思ってしまいます。
そして、ずっと気になっていたことがあります。
「もしかして、母の耳が遠くなった原因の一部は、父の大音量テレビなのではないか」
そう思うと、父に対して腹が立つ気持ちも湧きます。
でも、それを本人にストレートに言うのは難しい。
年を取った親に対して「あなたのせいだ」と言えるほど、僕は強くありません。
この時点で、すでにこの問題の難しさを感じていました。
補聴器の金額を調べて、正直ひるんだ
妹の相談をきっかけに、僕は補聴器について本格的に調べ始めました。
すると、まず目に飛び込んできたのが「金額」です。
補聴器は、想像以上に高い。
機種や調整内容によっては、両耳で100万円近くに届くことも珍しくありません。
「これは簡単に『買ってあげよう』と言える金額ではないな」
正直、そう感じました。
家電や眼鏡のような感覚で考えていた自分が、少し甘かったことを思い知らされました。
安いもの=補聴器、ではなかった
一方で、「意外と安いじゃないか」と思える商品も見つかります。
数千円から数万円で買えるものもあります。
ただ、よく調べると、それらの多くは集音器でした。
集音器は、音を一律に大きくするだけのものです。
そのため、使い方を間違えると、かえって耳を悪くしてしまう可能性が高いことも分かりました。
「安いから」と安易に選ぶのは、むしろ危険。
この事実は、今回初めて知りました。
市の助成金を調べて感じた、別の葛藤
次に、市の助成金制度を調べました。
確かに、助成が受けられるケースはあります。
ただし条件は厳しく、
・生まれつきの難聴
・障害者手帳を持っている
といった場合が中心です。
ここで、また別の葛藤が生まれました。
「母に障害者手帳を持たせることへの抵抗感」です。
助成金の金額自体も、補聴器の価格に比べると決して大きくはありません。
それ以上に「母がどう感じるか」を考えると、簡単には踏み切れませんでした。
周囲の女性やスタッフに相談して見えてきた現実
この件について、僕は自分の周りにいる女性を中心に相談しました。
そこで聞いた話が、意外でもあり、現実的でもありました。
「耳が遠くても、90歳を過ぎても、補聴器を使いたがらない人は結構いるよ」
ブログや体験談も読み漁りましたが、同じような話がたくさん出てきます。
実際、日本では
難聴でも補聴器を利用している人は2割にも満たない
と言われているようです。
眼鏡と補聴器の、決定的な違い
目が見えにくくなったら、眼鏡をかける。
これは、ほぼ当たり前の行為です。
眼鏡は安くなり、選択肢も多く、ファッションとして受け入れられています。
一方で、耳が遠くなったからといって、補聴器を買う人は意外と少ない。
しかも補聴器は高く、調整が難しく、最初に合わなかった場合、二度と使いたがらなくなるケースも多い。
この差は、想像以上に大きいと感じました。
女性とコミュニケーション、そして老い
僕はずっと「女性はコミュニケーションをとても大切にする」と思っていました。
だからこそ、聞こえにくくなることは、相当なストレスになるのではないかと考えていたのです。
でも、年齢を重ねると、
「聞こえなくなっても、あまり気にしない」
という女性も、実は少なくないことを知りました。
これは、僕にとって少し意外な発見でした。
母に提案して、はっきり断られた
意を決して、母に補聴器の話をしました。
結果は、予想していた通りかもしれません。
「年を取ったら耳が遠くなるのは仕方がないから、補聴器はいらない」
はっきりと、そう言われました。
母の性格を考えると、
「子どもに心配をかけたくない」
「お金を使わせたくない」
そういう気持ちも強く感じました。
妹との共有と、少し前進したこと
僕は妹に、正直に状況を伝えました。
「補聴器は断られた。ただ、難聴の程度が分からないと、周りがどう接していいか分からない。だから、耳鼻科で聴覚検査だけは受けてもらうことにした」
妹も、周囲に話を聞いていたようです。
すると、こんな話を聞いたそうです。
「何十万もする補聴器を買ってあげたけど、結局使っていない」
その話を聞いて、妹自身も
「本当に買ってあげることが正解なのか」
迷っていたようでした。
本人が求めない限り、できることは限られている
今回、強く感じたことがあります。
それは、本人が求めない限り、周囲にできることは本当に限られているという事実です。
良かれと思っても、押し付けになってしまえば逆効果。
結局、この件は一旦「白紙」という形になりました。
これから、こういう相談は増えていく
年齢的にも、こういう相談は、これから尽きなくなるでしょう。
親の老いと向き合うことは、避けて通れません。
今回の件は、答えが出たわけではありません。
でも「考えるきっかけ」にはなりました。
同じような悩みを抱えている人は、きっと多いはずです。
このブログが、誰かが「一人じゃない」と感じる材料になれば幸いです。
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